久しぶりにデンマークExcitor社「DME (Dynamic Mobile Exchange)」が、日本以外のウェブサイトに登場したので記事をご紹介する。米『ZDNet』のインド版の記事だ。
Flurry of products pushing BYOD in India (2013/05/17 ZDNet インド版)
タイトルは『インドにBYODを推し進める製品が相継いで登場』。要約には「過去数か月間、いくつかのIT企業と電話会社が、BYODのために設計されたデスクトップ仮想化、携帯端末管理、企業セキュリティツールを発表した」とある。
貴重な「DME」関連記事なので一段落ずつじっくり読んでみる。
「ガートナーの調査によれば、2013年までにインドはブラジル、中国に次ぎ3番目に大きい職場での個人端末導入国になると思われる。これらの発見はさまざまなニュースが私物端末の業務利用(BYOD)モデルを採用する企業数が増えていると報告していることの裏付けになる」
「These findings find support」に動詞が2つあるタイプミスが気になるが、ここで言うガートナーの調査は下記の記事などでふれられているものと思われる。
Half of Companies Will Require BYOD By 2017, Gartner Says (2013/05/01 CIO)
「企業はBYODが投げかけるチャレンジに対処するためデスクトップ仮想化、携帯端末管理、セキュリティツールを採用しつつある。例えば、Thermaxは先月Citrix社のデスクトップ仮想化製品を導入した。このインド・プネーが本社のエネルギー環境大手企業は、インドおよび海外に5つの工場を持っている。NDTV、HDFC銀行、Genpact、Essarグループ、Perfetti Van Melle、Indraprastha Apollo病院もそのソフトウェアを採用している。」
Citrixのデスクトップ仮想化製品は一種「定番」なので、インドでこれだけの導入事例があるのは当然だろう。
「Thermax社のCIOアニル・ナドゥカルニ氏は、同製品の導入についてコメントして次のような声明を出している。『完全な市場調査の後、IT基盤を更新する代わりに、われわれはCitrixのデスクトップ仮想化製品を導入することに決めた。最大の利点は、わが社が今やBYOD対応になり、いつでも、どこでもアクセスできることによって会社の意思決定が大きく改善されたことだ』」
なおインドThermax社をLinkedInで調べてみると、1980年創業の上場会社で従業員数は1001-5000名とある。たしかに大企業である。
「BYODの最大の懸念事項はセキュリティだ。携帯端末のデータ漏えいリスクは特に高い。携帯端末の中にはクラウドとデータを共有する設計で、アプリが共有する汎用的なファイルシステムを持たないものがあり、アプリ間やアプリとクラウド間で簡単にデータを複製する可能性を増やしている。」
BYODの場合、端末内のアプリどうしがコピー・貼り付けなどでデータを自由に共有できるようになっていると、簡単に会社データが社外に漏えいするため、それを防止する必要がある、ということだ。
「BYODの採用状況は世界各地で大きく異なっている。ガートナーによれば、米国企業は欧州企業の2倍、BYODを許可しやすいという。欧州は世界の全地域で最もBYODの採用率が低い。それとは対照的に、インド、中国、ブラジルの従業員たちは最も私物端末を使う確率が高く、典型的には仕事で標準的な携帯電話を使っている。」
欧州のBYOD採用率が低いのが本当だとすると、その原因は欧州のデータ保護関連法が非常に厳しいからだろう。インド、中国、ブラジルの従業員が仕事で私物端末を使うのは、単純に会社が端末を支給するコストを負担しないためと思われる。
「水曜日(2013/05/15)、SAPはSAP Mobile Secureという一連の企業向け携帯端末管理ソフトウェアを発表した。これは顧客企業に対して、端末、アプリ、コンテンツに企業レベルのセキュリティを提供する。この新しい製品群によって、いま最も人気のある携帯端末の利用者は、最適化された携帯端末の使用感を得られる。」
Citrix製品に続いて、SAPの新製品「SAP Mobile Secure」が紹介されている。ここでも先日ニュースを取り上げた。
「SAP Mobile Secureは同社の携帯端末管理ツール、SAP Afariaのクラウド版として新たなSaaS製品も提供し、1端末あたり毎月1ユーロで、企業が素早く容易に携帯端末のセキュリティを確保し管理できるように手助けする。」
このSAP Afariaの中小企業向けの大胆な価格戦略についても、先日ここでふれたとおりだ。
「同様に、火曜日(2013/05/14)、NetApp社は新製品Net App Connectを発表することでその製品群を拡張し、NetAppのストレージ・システムに保管されているデータへの安全で、素早く、簡単なモバイルアクセスをうたっている。」
Citrix、SAPに続いて、NetAppの製品が紹介されている。いずれも大手IT企業なので、順当なところだろう。
「全データを企業のファイアウォールの背後に安全に保管し、決してクラウドにコピーさせないことで、NetApp Connectは企業のITに求められる厳しいセキュリティと統制を維持しつつ、会社データへのモバイルアクセスを提供する。」
NetApp Connectという製品は初耳だったが、同社サイトの資料を見ると、iOS 5以上の端末のみ対応、Android端末では使えない。
「また別のベンダーi7 Networksは2013/05/02にPeregrine-Guardを発売した。このソフトウェアは、IT部門が、端末から出てくる情報とネットワークのパケットと端末の挙動を傍聴するという、三角測量の方法をつかって、ネットワークにアクセスしている端末を監視できるようにする。例えば、端末が会社のWiFiネットワークに接続しようとすると、同製品はどの端末がネットワークに接続しようとしているか特定できる。端末が脱獄されたり、ルート化されているかどうかも特定できる。端末にマルウェアがあるかどうかも確定できる。」
Citrix、SAP、NetAppに続いて、i7 Networksの製品が紹介されている。この社名は初耳だったが、それもそのはず、同社はインド・バンガロールを拠点とし、公式サイトの会社紹介を読むとインド・ローカルな企業だと分かる。
「さらに、BlackBerry、Bharti Airtel、Vodafone Indiaのような電話サービス事業者も独自のBYOD製品を提供し、セキュリティ課題に対応するとうたっている。BlackBerryは"Balance"という技術により、IT管理者が遠隔でロックやデータ消去を行うことができ、それによって企業の機密データを保護している。Airtel社のAirtel Dynamic Mobile Exchange (DME)は、企業が同一端末上で、電子メール、データアプリ、文書などの情報を分離することによって、会社データと個人データを分離できるようにする。Vodafone Indiaは類似の製品、Vodafone Secure Device Managerを持っており、この製品も、アプリのダウンロード、音声通話、データ通信など、端末の利用状況の追跡を可能にする。」
この部分には、明らかな誤りがある。
BlackBerryの「Balance」は、遠隔ロックや遠隔消去の技術ではない。1台のBlackBerry端末内で会社領域と個人領域を分割するための技術である。
遠隔ロックや遠隔消去の技術なら、"Balance"が発表される以前、BlackBerryの歴史の最初からすでに実現できていたことだ。
このあたりでこの記事の筆者の知識水準が疑わしくなる。
Vodafone Secure Device Managerは以前からここで書いているように、MobileIron製品のOEM供給である。なので携帯端末管理のフル機能を備えており、端末の挙動の追跡だけが主な機能ではない。
デンマークExcitor社が開発し、インドではAirtel社が販売している「DME (Dynamic Mobile Exchange)」についての記述は正確だ。
以上、この記事に登場した順に企業名をおさらいすると、Citrix、SAP、NetApp、i7 Networks、BlackBerry、Airtel、Vodafoneとなる。
残念ながら「DME」の開発元Excitor社の名前は登場しないが、最後から二番目に何とか取り上げられたのは、Airtelがインド最大の携帯電話会社だからこそかもしれない。