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2012/02/14

高所恐怖症の人に10mの飛込み台に登る日課を義務づけてみよう

細菌性急性胃腸炎から復帰したばかりの僕だが、38度の発熱で苦しむ前に、書こうと思っていた記事を書く。

福島第一原発事故による線量は、科学的にみて健康被害がないことを、この際、認めてしまおう。それでも「だから福島に戻ってきても大丈夫です」という言説に、まったく説得力がないことを、以下に論証してみる。

高所恐怖症の人たちがいる。僕も少し高所恐怖症ぎみだが、飛行機に乗れないほどではない(僕が飛行機に乗れないのは閉所恐怖症だから)。

さて、高所恐怖症の人は「高所恐怖」カルトに洗脳された結果、高所恐怖症になったわけではない。原因ははっきりしないが、物心ついたときから高い場所が怖かった、としか言えない。トラウマ体験みたいなものが、明確な人もいるだろうけれど。

さて、高所恐怖症の人に、例えば毎日高さ10mのプールの飛び込み台に登ることを日課にする生活を強制したとしよう。

飛び込み台が突然くずれ落ちるなんてことは、科学的に絶対ありえない。なので、高さ10mの飛び込み台に毎日登ることを日課にした結果、死ぬなんてことは、科学的にありえない。

高い所が平気な人にとってはむしろ、毎日一回、見晴らしのいい高台に立てることはいい気分転換になるかもしれない。

しかし高所恐怖症の人たちにとっては、毎日10mの飛び込み台に登らなければいけない生活は、苦痛以外の何ものでもない。そんな生活から逃げる手段があれば、当然のことながら逃げるだろう。

そんな高所恐怖症の人たちに対して、

「10mの飛び込み台は科学的に絶対崩れることはないので、死ぬこともない。にもかかわらず飛び込み台に登る日課から逃れるというのは、非科学的かつ非合理的な行動だ」

とか、

「そのために故郷の土地を捨てるのは非倫理的だ」

とか、

「自分の子供が高所恐怖症であっても、毎日10mの飛び込み台に登らせるのが親の義務だ」

などと意見するのは見当違いもはなはだしい、というか、頭がどうかしている。

同様に、現状の放射線量で健康被害が起こる可能性がなくても、それを恐怖に感じる人が出てくるのは仕方ない。東京都知事がそれを「単なるセンチメント」だと言うなら、センチメントのない人間など一人もいない。

放射線恐怖症も、言ってみれば高所恐怖症みたいなものだ。

科学的に安全性が証明されているからと言って、怖いものは怖い。別に放射線危険カルトに洗脳されたわけでもないが、どうしたって不安は残る。これは理屈の問題ではなく、感情の問題だ。

そういう人間に対して、いったい誰が「科学的には安全なのだから怖がるな!」と、怖がらないことを強制できるだろうか。

トマト嫌いの人に健康に良いからと無理やりトマトを食わせるとか、学校の黒板を爪でひっかく音が嫌いな人に毎日10分無理やりその音を聞かせるとか、科学的に健康に害がなくても嫌なものは嫌、というのは、ごくごく普通の人間的な反応ではないか。

福島の放射線レベルを「非科学的に」怖がって「過剰」に避難している人々を、暗に非難している人たちは、自分たちはそういう恐怖症や、食べ物の好き嫌いといった、いわゆる「生理的にダメ」なものが一つもないと言い切るつもりだろうか。

健康に無害なレベルの放射線を怖がる人々は、そのほとんどが、東日本大震災後、突然、放射線有害カルトに洗脳されたからではなく、もともと「放射能」や「放射線」というものが漠然と怖かっただけ、と考えるのが自然だ。

まるですべてが東日本大震災後に出現した、放射線有害カルト集団の洗脳の効果であるかのように論じるのは、誇大妄想というか、国民をバカにし過ぎというか、カルト集団の洗脳力を買いかぶりすぎというか、議論として不自然である。

でも、こう書いたところで、福島放射線安全派は、福島の「過剰避難」を徹底的に非難し続けるだろうけれど、まあそれはそれで人間の「センチメント」だから仕方ない。

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